コラム

ソーシャルワーク実習を終えた学生の疑問

 
以前、ある学生(「Aくん」とする)が、社会福祉の現場でソーシャルワークを学ぶための実習を終えて、大学に戻ってきてこういった。


「先生、自分は実習を終えた同学年の学生と話していて不思議に思ったことがあります。友人たちは、児童福祉施設、高齢者福祉施設、社会福祉協議会など、違った現場に配属されて実習してきました。それぞれが体験したことを振り返りの授業で話し合ったのですが、分野や施設の種類が違うと、職員さんがしていたことや実習生が体験したことが、全然違うように思えました。どの実習先の職員さんがしていたことも、全部ソーシャルワークなのですか?」


さて、これは本質を突いた質問である。

同じく福祉分野の専門職である介護福祉士と比べて、社会福祉士や精神保健福祉士といったソーシャルワーカーのしていることは、一見すると、確かにわかりにくい面がある。

これは、活動する分野が幅広く、現場ごとに担っている業務に違いがあること、ソーシャルワークの問題解決方法には多様なレパートリーがあり援助対象ごとに選択的に用いるので、援助実践の全貌を把握して統合的に理解することが容易でないことが一因としてあげられる。

しかし、学校で講義を聞き、現場実習を体験してなおソーシャルワークに関する納得のいく理解にたどりつかないで困惑しているAくんが今求めているのは、そういった講義のような解説ではないようだった。

うーんと頭をひねりながら、Aくんは、音楽をこよなく愛する人物であることを思い出した。

「世の中にはいろんなロックバンドがあるよね。バンドの個性はそれぞれ違うし、一つのバンドが演奏する曲も、曲ごとに雰囲気が違うことがある。でもロックバンドはロックバンド。それと同じことだよ。」
といった。

それを聞いて、Aくんは一言「なるほど」といってくれた。
(A君は、すでに卒業している。きっと現場でソーシャルワーカーとして奮闘していることと思う。)

この記事を書いた人
岩間 文雄
岩間 文雄 - いわま ふみお -

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