コラム

自己覚知について

 
本学社会福祉学部では、日本におけるソーシャルワーカーの国家資格である社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験受験資格が取得可能である。

私は、大学でソーシャルワーカーが用いる相談援助の方法(ソーシャルワーク)を教える科目を担当している。

この科目で一般的に用いられるほとんどのテキストでは、ソーシャルワーカーにとって「自己覚知が必要である」とされている。

自己覚知とは、援助者であるワーカー自身が自分の感じ方、考え方の傾向、知識や技量について意識化し、自ら把握しておくことである。

自己覚知が必要だとされるのには、もちろん理由がある。

ソーシャルワーカーは、サービスの利用者の主体性を大切にし、問題を抱えた当事者自身が自ら問題解決に向けて取り組むことを重要視する。そのため、ソーシャルワーカーが自分自身についてよく理解しておかないと、サービスの利用者をありのまま理解できず私情や偏見にひきずられてゆがんだ捉え方をしてしまう可能性がある。
また、ワーカーが感情的反応をコントロールできずに、サービスの利用者に対してバランスの取れたかかわりが出来なくなってしまうことが危惧されるためである。

テキストで教えられている通り、対人援助の専門職であるソーシャルワーカーにとって自己覚知は不可欠であるといえるだろう。

しかし、非常に大切な一方で、自己覚知に至るのは大変難しいことでもあると思う。

私は科目担当者として「自己覚知が大切だ」と教える立場にあるのだが、「では、あなたは自分についてよく理解しているか」と聞かれれば、50歳になった最近になってもきっぱりハイと答える自信はない。

年齢を重ねるにつれて自分が変化していくので、「これで自己覚知が完了した」というものでないという側面もあるのだが、それ以前に自分は何を大切に生きているか、人にどういう人物だと思われているかといった基本的な自分像についてさえ、イメージすら持てていないのではないかと我ながら情けなくなることがしばしばある。

大切なことは、言葉にすればシンプルである。しかし、それを実行するとなると本当に難しい。

この記事を書いた人

RELATED POST関連記事

  • カナダ バンクーバー研修記(後編)
    後編は、研修プログラムについてご紹介したいと思います。 プログラムの柱は、 〇英語研修 〇福祉施設交流訪問・医療機関視察 〇デイケア(保育園)におけるボランティア の3つでした。 英語研修は、キャンパ [...続きを読む]
  • 福祉はゴール?でもなんでもない!
      「ローマ人の物語」の作者である塩野七海さんは、著書の中で「福祉によって誇りは満たされない。」と述べています。 この言葉だけだと誤解を招く(福祉は必要ではない等)ので、今少し考えていく必要 [...続きを読む]
  • 「大切なこと」をスケッチする③―心で分かる、だから行動が伴う―
    楽天イーグルスのオコエ瑠偉選手のツイッターが大きな反響を呼んでいます。 オコエ選手は東京都出身でナイジェリア人の父親がいます。 保育園の頃、親の似顔絵を描く際に、先生が「肌色で塗りましょう」と言った時 [...続きを読む]

LATEST POST最新の記事

  • なぜ社会福祉学部で政策やビジネスを学ぶのか
      タイトル、2024年4月から関西福祉学部社会福祉学部社会福祉学科では、新たに社会マネジメント専攻が立ち上がります。 「そうなんだー。」と納得される方もいるかと思いますが、多くの方が「なん [...続きを読む]
  • 本学伝統のコミュニティアワーのテーマに関する覚書(前編)
      関西福祉大学(の社会福祉学部社会福祉学科)が開学以来ずっと行ってきているユニークな教育プログラム、それが「コミュニティアワー」です。 教室を飛び出して、地域社会全体をフィールドに展開する [...続きを読む]
  • 「推し」の心理
      近年、「推し」ということをよく耳にします。 アイドルや芸能人を指して「私の推しは〇〇」という発言や、大人気アニメのタイトルにも用いられています。 それ程までに一般化した「推し」とは、どの [...続きを読む]
PAGE TOP