コラム

演習Ⅳ担当教員は語りたい

 
これからソーシャルワーカーとして働こうとする演習Ⅳ(4年次生対象)ゼミ生、既にソーシャルワーカーとして働いている元ゼミ生に、(おせっかいだと思いつつも)折に触れて伝えてきたことが二つある。

一つは、人の役に立っているという実感を常に得るのは難しいということだ。

大学で理論を学び、国家試験に合格してソーシャルワーカーとして就職した人は、身につけた専門知識や技術を生かして社会のために貢献したい、常に人の役に立ち人から感謝されたいと思うかもしれない。だが援助専門職としての仕事といっても、そんなに頻繁に人の役に立つ経験ができるわけではない。坦々と地味な業務を続ける日常が続くのだが、それはその人が専門職としての能力に乏しいからではなく、仕事とは大体みんなそんなものだからだ。長く続けていれば、「たまには人の役に立つこともある」くらいの感覚でいるのが丁度いいと思っている。

もう一つは、仕事は誰かが交代できるものということだ。

これまでたくさんのまじめで責任感がある学生と出会ってきた。そうした人は、就職した先でクライエントから頼りにされ、職場から信頼されていることだろう。仕事にやりがいを感じ、周囲からの期待に応じられていればいうことはない。しかし、やりがいよりも苦悩や負担感の方が著しく際立ち、心身の健康を損なうほどにバランスを崩しそうになったら、まじめな人ほどストレスフルな状況の原因を自分に求め、「自分がしっかりしなければクライエントや周囲に迷惑がかかる」と思い詰め、がんばりすぎてしまう。もし、そういう考えが頭を占めているようなら、ふと一息入れて「本当にそうか」と考えてみよう。例えば、あなたが辞めても職場に心配するほどの影響はないし、数日後には何事もなかったようにまわっているものだ。どうにもしんどくなったら撤退すればいいし、投げ出してもすぐに代わりの誰かが担うことができるのが仕事である。

だから、今は自分ができる範囲で取り組めばいいと考えよう。

仕事をどうとらえるかによって、しんどさはずいぶん違う。
不必要に自分に負荷がかかることがないようにしよう。そうして、自分の健康を大切にしよう。

それがソーシャルワーカーとして、クライエントや自分の実践を大切にすることにつながる。

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