誰もが幸せであるために ~ユマニチュード~
人は、社会的な交流をもち、尊厳を守られながら生きる権利を持っています。
人生100年時代といわれる今、85歳以上の4人に1人が認知症もしくは軽度認知障害になることも予想されています。
たとえ、認知症になったとしても、尊厳を守られることはとても大切なことです。
認知症の方への対応の仕方として、フランスのイヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんによって開発された「ユマニチュード」といわれる技法があります。ユマニチュードでは、「人は、死ぬまで立つことができ、死を迎えるまで人は立つ機会をもつことが可能である」という哲学のもと、「みる」「話す」「触れる」「立つ」という4つの技法が主に重要であるとされています。
認知症になり、空間認知力に支障がでてしまうと視界が狭まるとも言われています。
高齢者に安心して頂くために、ケアをする人はまず、部屋のドアを3回ノックし、高齢者の正面から近づき視界に入るようにします。もし高齢者が寝たきりの場合だと、ベッドボードを2回ノックします。高齢者から返答があれば、ケアをする人は、挨拶から始め、これからどのようなケアをさせて頂くのかを伝えます。前ぶれもなく突然触られると、誰でも驚きますよね。ですので、まずは安心して頂くためのコミュニケーションをとるのです。
ケアをする人は、優しくゆったりした口調で、これから行うケアの内容についても伝えます。
例えば、体を清拭する場合には、意図を伝えたうえで、優しくタッチするように触れていきます。そして、ユマニチュードでは、寝たきりの方であっても、20分程度立って歩く機会を持つことも大切であると言われています。
私は、ユマニチュードが実践されている場面をテレビで見たことがあります。
ベッドに寝たきりで困惑した表情をしていた高齢者が、ユマニチュードを実践されると、立ちあがって少しずつ歩き、笑顔を見せて、ケアをする人の言葉にしっかりと返答するようになっておられました。
この姿を拝見することで、人はいつ、どのような場であっても尊厳を守られる権利を持っているのだと改めて感じました。
高齢者が幸せでいてくだされば、ケアをする人との間にも愛の循環が生まれ、幸せの連鎖が生じるようになるのではないでしょうか。
高齢者のケアをするとき、これらのことを今一度思い起こしてみたいものです。
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