協力・連携・協働について
前回のコラムでは、働き方モデルのお話をしました。今回はその続きということになります。
私は虐待等の様々な理由で養育者と一緒に暮らせない子ども達が入所している児童養護施設において、心理職として働いてきました。そのような現場で、働き方モデルを創出していく際に、自然と区別するようになったのが、「協力」「連携」「協働」でした。これらの区別はあくまでも私個人の中での区別であって、学術的な概念整理ではありませんが、次のように考えることができると思います。
「協力」は他の職種の支援目標や方法を理解した上で、自分の出来る範囲のことを行うことで、他の職種をサポートすることです。これは心理職としてというよりも、同じ組織で働く一員として出来ることがあればさせてもらおうというものです。すべてではないですが、中には別の専門性が求められる内容が入ってくることがあるため、慎重に出来る範囲を見極める必要があります。あくまでも「求め」があって、法的にも倫理的にも許容される範囲内で行うことになりますし、場合によっては、「行わない」という判断が必要になります。
「連携」は関わる専門職全員が、チーム全体の支援目標を共有しながら、自分の持ち場でその役割を果たすことで、全体の目標達成に寄与することです。この場合、チーム全体の目標を達成するために、それぞれの専門職の役割に応じた支援目標・方法が別に存在し、お互いにそれらを一定程度理解することが求められます。またその過程においては情報交換が活発に行われ、それによって各専門職の支援目標・方法が微調整されていくこともあります。「協力」では特定の専門職の支援プロセスが一つだけあるのに対して、「連携」の場合では、専門職の数だけ支援プロセスが存在することになります。そして、それらは対等の立場であり、相互補完的であったりします。
「協働」は、複数の専門職が最初から共通の目標を設定し、プロセス自体も共有しながら業務にあたります。先の「協力」「連携」と混同してしまいやすいですが、「協働」の場合は共通の支援目標・プロセスが一つだけ存在している状態であり(連携との違い)、それは特定の専門職によるものではありません(協力との違い)。あるタスクを達成するために、立ち上げられるプロジェクト型の業務の場合に、このような形になることが多かったように思います。
さて、前置きが長くなりましたが、組織の中に心理職が息づき、チームの一員として機能していくまでの過程において、常に「れんけい」が求められました。あえて平仮名で表記したのは、「れんけい」と呼ばれている業務の中には、先ほどの3つが混在していることが多かったからです。「協力」を求めているにすぎないものが「連携」と呼ばれていたり、「連携」と呼んではいるが、双方向性がなく、一方の支援目標・方法への理解や情報提供だけを求められたりしてしまう場合が多くありました。こういった「れんけい」にまつわる混同がありながら、何とか一つひとつをひも解き、整理していく中で、成熟したチームとして機能させていくことが大切に思います。
専門職として求められる業務がある一方で、その専門性が十分に発揮されるための土壌を作っていくことも、我々に求められるものではないかと思います。
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