コラム

「感性」を磨く

 
人間は集団を構成して生活をしています。

その最大が社会です。

人数が多くなればなるほどトラブルが多発するので、社会にはさまざまなルールが設けられています。
そのルールは、大多数の人が受け入れることが出来るような内容で構成されています。

そのため、少数の人たちが不利益を被るのは「仕方がないこと」として受け流してきました。

その理由はさまざまですが、多くは「効用の最大化」を前提としています。
すなわち、「資源には限りがあるのだから、より多くの人の役に立つように活用した方が良い」とする考え方に基づいています。

しかし「全体の利益のために少数の人たちが犠牲になる社会」が正しいとはいえません。

どこかに間違いがあります。

その間違いを生み出す原因の一つに、少数に追いやられている人たちが抱えている困難に対する無関心があります。

少数の人たちは、出自や性別、生まれながらの貧困、あるいは自然と固定化されている役割といった「自分の努力だけでは乗り越えることが出来ない困難」を抱えています。
これらの困難は、自分に関係がなければ見過ごしてしまうので、多くの人はそのことが困難であると気づいていません。

もちろん少数の人たちは困難があることを社会に対して問いかけています。
ところが数に押されて届かない、すなわち「声なき声」として埋もれてしまっているのです。

だからその声に耳を傾け、「すべての人があたりまえに生活することが出来る社会」について考えることが大切です。
そしてその声に気づくためには、豊かな感性が必要となります。

感性というと「天性の賜」のように思えますが、誰もが持っている才能です。
感性は、心を震わす音楽に接する、涙を誘う映画に没頭するなど、自分が美しいと感じる事柄、すなわち芸術に触れることを通して磨くことが出来ます。

感性を磨いて世界を広げ、声なき声に気づける人、他者の苦しみを自らの苦しみと理解できる人が多くなってもらいたいと思います。

この記事を書いた人
岡﨑 幸友
岡﨑 幸友 - おかざき ゆきとも -
専攻は倫理学で、特に「善の実現に至る道筋」に関心があります。また独我論からの脱出が課題です。

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