「障害当事者の声」の政策反映
2006年に国連総会において、障害者権利条約が採択されました。
障害者権利条約とは障害者の権利を実現するために国で行うべきことが決められてあり、2014年に日本も締結しています。日本では条約の内容をさらに具体的に取り組んでいくために、2016年に障害者差別解消法を施行し、同法では障害者の不当な差別的取り扱いの禁止と合理的配慮の提供について規定しています。
その障害者権利条約をつくる過程の中でも注目したいのは、障害当事者たちのスローガンであった「私たち抜きに私たちのことを決めないで(Nothing About Us Without Us)」という考え方です。
ここでいう「私たち」とは障害当事者のことであり、障害者権利条約も障害当事者の参加がある中で作られました。つまり、政策策定過程に障害当事者の参加・参画があることを求めています。
障害者福祉の歴史を振り返ると、障害当事者の声によって生活のしづらさが変わった例は多くあります。例えば、現在はノンステップバスが普及し、車いすを利用している方がバスに乗車するのは当たり前に目にする風景だと思います。
しかし、1970年代頃は、車いすを利用している人はバスの物理的な問題もあり、介助者なしにはスムーズに乗車することができませんでした。それに対して、「おかしい」と感じた障害当事者たちが、介助者なしでも乗車できるように全国の様々な地域で声をあげ、暮らしやすいまちづくりが進められてきた一面もあるのです。
現在は、障害当事者が政策策定過程に参加・参画する仕組みが以前よりも作られるようになってきました。例えば、地方自治体が策定する障害福祉計画・障害者計画に委員として障害当事者が参加するといったことです。
しかし、現在の様々な仕組みが十分に活かされているか、まだ明らかになっていないこともあります。
そのため、「障害当事者の声」を政策に反映することのできる仕組みづくりの研究に私は取り組んでいます。
RELATED POST関連記事
-
2021/11/15 こども福祉コース悩ましさに悩む①昨日の失敗を繰り返さない、今日の努力が明日の成功につながる。 子どもの頃によく聞いた言葉です。 しかし近年、「今この瞬間に着目する」「今を生きる」ことが注目され、それらは心理学の分野では [...続きを読む]
-
2022/06/17 こども福祉コースコロナ禍での不登校児童・生徒を考える不登校児童・生徒の増加 2020年度に30日以上登校せず「不登校」とみなされた小中学生は前年度より8・2%増の19万6127人で、過去最多だったことが文部科学省の問題行動・不登校調査で明 [...続きを読む]
-
2020/10/19 心理福祉コースそれでも、自分のゴールにむかう ~ストレスと受け止め方の話~大学で勤務をしていると、卒業生から連絡が入ったり、研究室に顔を見せにきてくれたりすることがあります。 社会人になって、元気に過ごしているという近況報告もあれば、少し働くことが辛くなってき [...続きを読む]
LATEST POST最新の記事
-
2023/02/26 こども福祉コース変わるのはだれか本学で行っているSDGs(持続可能な開発目標)の取組み。 今となっては生活していればあらゆるところで耳にする言葉なのではないでしょうか。 先進国から開発途上国への一方的な「支援する−支援 [...続きを読む]
-
2023/02/07 総合福祉コース支援を支える考え方の一つ私たちの行動は、目的を果たすために行われます。 例えば「大学に行きたいから、勉強する」し、「全国大会に行きたいから、練習する」といった具合です。 だから目的を果たせないと分かっていたら、 [...続きを読む]
-
2023/01/21 総合福祉コース政教分離と私立学校高校生から「うちの学校では宗教の時間がある。これは憲法違反ではないのか。」と質問されることがあります。 確かに、日本国憲法第二十条「①信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる [...続きを読む]
コラムTOP
執筆者
タグ一覧
- ALS
- ICT
- PTSD
- SDGs
- あたりまえ
- かけがえのなさ
- つながり
- アスリート
- エンパワメント
- オンライン授業
- コミュニティ
- コラボレーション
- コラム
- コロナ
- コーチ
- コーチング
- コーチ哲学
- ジャージ
- ストレス
- スポーツ
- スポーツウェア
- スマホ
- ソーシャルディスタンス
- ソーシャルワーク
- ダイバーシティ
- デザイン
- トラウマ
- ノーマライゼーション
- ノーマリゼーション
- ハラスメント
- バレーボール
- ホーム
- ボランティア
- メンタルヘルス
- レジリエンス
- 不平等
- 人生
- 人生100年時代
- 人間関係
- 介護
- 体育
- 依存
- 児童虐待
- 共生
- 冷蔵庫マザー
- 協働
- 協力
- 印象
- 危機管理
- 問題行動
- 国家試験
- 声なき声
- 多文化
- 多文化共生
- 多様性
- 多職種連携チーム
- 大学教育
- 子ども
- 子ども支援
- 子ども食堂
- 学会
- 宗教
- 実習
- 尊厳
- 差別
- 平等
- 幸せ
- 復興支援
- 心理療法
- 怒り
- 性格
- 悩み
- 愛情
- 愛着
- 感性
- 感染症
- 成年後見制度
- 授業
- 援助
- 支援
- 政策反映
- 教養
- 文化
- 正しさ
- 正義
- 活動
- 海外研修
- 渡航医学
- 災害ボランティア
- 災害時要配慮者
- 生活困難
- 異文化
- 真実
- 矛盾
- 知性
- 知的障がい
- 研究
- 社会福祉士
- 福祉実践
- 福祉思想
- 福祉教育
- 科学
- 移植
- 精神障がい
- 経済
- 脳死
- 臨床心理学
- 自尊心
- 自己覚知
- 自己責任
- 自立
- 自粛警察
- 自閉症
- 若者
- 虐待
- 表現行動
- 観光
- 認知
- 認知症
- 読書
- 路上生活者
- 連携
- 適性
- 重要な一冊
- 障害当事者の声
- 障害者権利条約
- 難病
- 高齢者
- 高齢者福祉