コラム

コーチの眼

スポーツ現場では、コーチがアスリートのパフォーマンスを評価する際に、記録などの競技結果はもちろん選手自身の感覚や“コーチの眼”が用いられます。

特に「動き」については、運動のリズム、流れ、力み(りきみ)具合、姿勢、四肢の同調性などをコーチが眼で捉え、その捉えた動きを評価し、アスリートへとフィードバックします。
つまり、アスリートの動きの全体像から細部にいたるまで丁寧に観察し、パフォーマンスをコーチが主観的に分析するのです。
一方、スポーツ科学が発展した今日では、アスリートの動きを動作分析機器やアプリケーションを用いて測定し、簡単に数値化して評価することも可能です。
しかし、アスリートのパフォーマンスは“ナマモノ”であり、機器を通して測定し、分析や処理を行い、数値へと変換していく過程で様々な重要な情報を失い、真のパフォーマンスの姿ではなくなってしまいます。
特に、パフォーマンス開始から終了までの一連の動きの流れや、運動のリズムなどは機器を用いて捉えることは難しく、ましてや数値にして忠実に表現することはほとんどできません。
そこで、アスリートの動きの全体像を瞬時に捉え、一連の動きとして評価するコーチの眼がスポーツ現場では非常に重要になります。
コーチの眼はただ単に運動の観察を続けていれば磨かれていくわけではなく、アスリートの動きを瞬時に理解するために解剖学やバイオメカニクス、物理学の基礎的な知識等が必要になります。

科学的な測定機器やアプリケーションを使うため、あるいは客観的に体力やパフォーマンスを評価できるようになるためだけに科学を学ぶのではなく、スポーツ現場で自分の「眼」を使ってアスリートの動きを捉えるためにも、科学を学ぶことはとても大切なのです。

この記事を書いた人
熊野 陽人
熊野 陽人 - くまの あきひと -

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