変異株とは何ぞや?
いま、新型コロナのニュースを見れば「変異株」という言葉がほぼ必ず出てきます。
大阪で変異株、東京で変異株、五輪会場で変異株が出たら、等々。
では実際に変異株とは何ぞや?
といえば、案外、いまさら人には聞けない(けどよくわからない)知識という人も多いのではないでしょうか。
今回はこんな変異株に焦点をあててゆきたいと思います。
変異株とは、工業製品でいうところの「不良品」と考えればよいでしょう。
コロナウイルスの遺伝子は、約3万個のアミノ酸が連なった1本の長い鎖から成ります。
感染すると私たちの細胞内でこれが精巧にコピーされて同じものがどんどん複製されてゆきます。
しかし、おおよそ2週間に1回ほどの割合でコピーミス、すなわち、部品を1か所取り違えてしまったものが発生します。
違う部品が取り付けられた不良品ですから、通常、生きながらえることは出来ずに消え去ります。
しかし、ごくごくマレに、違う部品を取り付けたら本来の設計図どおりもものよりも高性能な製品が出来てしまった!
ということが起こります。
これが「変異株」として話題になってくるものです。
さて、この、定着してしまった変異株には大きく2つのグループがあります。
野球の1軍・2軍に相当します。
1軍に相当するのがVOC(Variant of Concern)、「懸念される変異株」とよばれるグループです。
2軍に相当するのがVOI(Variant of Interest)、「注目されるべき変異株」です。
野球と異なるのは、2軍から1軍への一方通行(あるいは万年2軍のまま)で、“降格”はありません。
本稿執筆の6月27日時点で、WHOが指定しているのはVOCが4種類(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、それぞれ従来通称されてきた英国株・ブラジル株・南アフリカ株・インド株に相当)、VOIが6種類です。
前述のように2週間に1回、草野球チームのように大量の変異株ができるのですが、そのなかで生き残ってプロ(VOC,VOI)になれるのはほんの一握りです。
では将来はどうなるかといえば、ウイルスの性格上、今後も新たなプロ級変異株(VOC,VOI)はどこかで出現してゆくと考えるのが自然です。
変異のなかには「免疫逃避」、すなわち、従来株への感染やワクチン接種などでいったん出来上がった抗体の働きをすり抜ける作用が指摘されるものもあります。
そこから、ワクチンの効果がなくなるのでは?と懸念する声もありますが、必ずしもそうではないようです。
いま日本国内で接種がすすむファイザー社製ワクチンでは、New England journal of medicineに報告された報告では、変異株に対し十分な中和抗体(実際に抵抗するのに役立つ抗体)が出来ており、また別の報告でも、2回接種2週間後では英国株に対して89.5%、南アフリカ株に対して75.0%で、重症者、死者の発生抑制率は97.4%と報告されています。
したがって、現時点では、変異株の「感染力の強さ」のところに注目して向かいあうべきでしょう。
これはたとえていえば、従来株が少々出来の良くないジグゾーパズルで、ぐいっと押し込んではまるのに対し、変異株は上等のジグゾーパズルですっとはまり込むとイメージすればわかりやすいです。
だから、体に入れないことがこれまで以上に重要で(体に入らなければ従来株と同じ)、これまで以上に、手洗い・マスク・ソーシャルディスタンス・三密回避・黙食・黙煙といったことを「継続的に」「隙間なく」徹底してゆくことが必要です。
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