コラム

尊厳教育とは何か?

 
日本の経済成長と暮らしを支えるために原子力発電が必要と考えられています。
でも、原子力発電所付近の住民は、放射能に被曝する可能性に晒されています。

同様に、日本の安全保障のために沖縄に米軍基地がおかれています。
でも、沖縄の人たちは、ヘリコプターや飛行機の墜落、米兵による犯罪などの危険に晒されています。

全体の利益のために一部の人が犠牲になるこうした構造を、哲学者の高橋哲哉さんは犠牲のシステムと呼びました。

さて、みなさんは「全体の利益のために一部の人が犠牲になるシステム」をどう思いますか。
大学に入学間もない1年生に聞くと、ほとんどの人が「仕方ない」と答えます。これは、全体の利益のためには一部の人が犠牲になるのは「仕方ない」ということです。

ここには「数の論理」があります。

それは「多いものの方が尊重されるべき」といった思考です。
これに対して「固有名の倫理」とでも表現すべきものがあります。
これは、人間一人ひとりは「数の論理」に還元されない別格な価値、すなわち尊厳があるといった思考です。

一人ひとりに尊厳を感じることができれば、「全体の利益のために一部の人が犠牲になるのはおかしい」と感じます。
こうした感性そして人間理解を育むことが、社会福祉学部で取り組んでいる尊厳教育です。

この記事を書いた人
中村 剛
中村 剛 - なかむら たけし -
福祉現場の経験と哲学という営みを通して、社会福祉の根拠となる「知」を明らかにしたいと思っています。

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