コラム

子どもの「レジリエンス」という視点

 
前回のコラムでは不適切な養育のもとに育った子どもたちの愛着について書きました。

今回は最近よく聞くようになった「レジリエンス」について書きたいと思います。

一般的にレジリエンスとは「こころの回復力、柔軟性、しなやかさ」を指します。

非常にハイリスクな状態や慢性的なストレスにさらされているにも関わらず、良い適応を示したり、肯定的な機能を維持していたり、自分の能力を伸ばしていけることを意味します。

しかし、現在のところ、定義が少し曖昧なところがあります。

例えば、
①「ハイリスクな状態や慢性的なストレス」の範囲をどうとらえるか?
②「良い適応」とはどういう状態を指すのか?
③「こと」とは何を示すのか?(例えば、能力なのか、現象なのか、結果なのか、プロセスなのか)
といったあたりです。

ここでは議論の詳細は省きますが、私が個人的にもっとも大切だと考えているのは、②「良い適応」のとらえ方です。

一般的に良い適当とは、対人関係が安定しているとか、学業成績が優秀であるとか、いわゆる誰が見ても肯定的に評価する内容を指していることが多いと思います。
私がこれまで出会ってきた子どもたちの中には、確かに逆境的な環境の中で「一般的な良い適応」を示す子ども達がたくさんいました。

しかし、一方でまったく当てはまらないという子どもたちもたくさんいました。

例えば、他者に暴言・暴力が止まらない、自己中心的で被害的、自傷行為を行う、学業など論外といった子どもたちです。
いわゆる「問題児」として扱われがちな子ども達と言えるかもしれません。

それでは、この子ども達にはレジリエンスがまったく見られないのかというと、そうではありません。

確かに一般的な良い適応をしているわけではないけど、その環境の中で何とか生き抜いてきた、生き抜いているということ自体がレジリエンスの発露なのではないかと思っています。
そして、このような子ども達が示す「問題ととらえられがちな行動」の中にも、様々な願いが潜在しており、必死に今を生き抜こうとしている姿が見え隠れしているように思います。

子ども達に関わる大人にとって大切なのは、分かりやすい良い適応を発見するだけではなく、時に問題を起こしながら苦闘している子ども達の姿にそのレジリエンスを見出すことではないかと思います。

その意味で、レジリンスという概念は、私たちの視点を見直すきっかけになるのではないかと思います。
 

この記事を書いた人
高田 豊司
高田 豊司 - たかた とよし -
心療内科クリニック、スクールカウンセラー、重症心身障害児施設等を経て、児童養護施設の心理職として勤務してきました。授業だけではなく、現場で役立つ実践的な学びが得られる機会を作っていきたいと考えています。また研究室が、在学中のみならず、卒業後の学生の皆さんの心の拠り所となれば考えています。

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