正しいアドバイスの役にたたなさ
大学教員として働いていると、在学生や卒業生からさまざまな相談を受ける。
在学生からは家庭のことや進路、勉強のことが多く、卒業生からは職場の人間関係や転職についてのことが多い。
ソーシャルワーカーの業務における面接にも通じることだが、そのような場合、本人は無自覚かもしれないが、「聴いてほしい」というニーズが根底にある場合が多い。
相談してくる人は、例えば職場の気難しい先輩との付き合い方について、自分が直面しているややこしい、こんがらがった状況について人に説明し、自分の思いを言語化することによって整理できる面があるようだ。
それを満たすことができれば、相談に乗った方としてもうれしい。
相手の話を聴くだけではなく、アドバイスをすることもある。
だが、最近この「アドバイス」について、ものによっては「役に立つことがあるのかな?」と疑問に思うことがある。
一般的に、世の中にはどこの誰が聞いても正しい、文句のつけようのないアドバイスというものがある。
自己肯定感の低い人に対して、「もっと自信を持ちなさい」とか、自暴自棄気味になってしまっている人に「自分を大切にしなさい」とか。
悩んでいる人を見ると、ついそうした言葉をかけたくなるものだ。
しかし、よくよく考えてみると、その人は「自信を持てない」から困っているのだし、「自分を大切にする方法」を知っていればもう大切にしているはずである。
悩んでいる人を励まそうとして、こうした言葉をかけることにはいたわりを伝えるという意味があるかもしれないが、問題への対処方法としては役にたたない。
「目的地Aへ行きなさい」とだけ伝えて、行き方が記された地図を渡さない、といったようなピントのずれを感じてしまう。
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