国境を越える疾患の移り変わり
外務省医務官として12年間の海外医療の世界から大学での勤務を通じ、現在進行形で展開する「国境を越える疾患」にかかわってきた想いです。
最初は2002年(2003年から本格化)のSARS流行。2007年頃から取りざたされた鳥インフルエンザH5N1。
2009年の新型インフルエンザH1N1。2013年から中東ではじまり2015年の韓国流行で身近になったMERS。
2014年のエボラ熱。
2016年のジカ熱。
2017年のヒアリ騒動。
これらの経緯を見ながら、人類が進歩したこと、進歩しなかったことが浮かんできます。
進歩したこと。
なんといっても情報共有です。
今回の新型コロナ(COVID-19)では1月上旬には早くも遺伝子配列が中国の研究施設から公開され、世界中の研究者がその遺伝子配列を知り、ワクチンや治療薬や検査キットの開発競争が一斉にスタートを切りました。
SARS流行時の北京では、その検体を入手しようと、水面下でさまざまな政治的駆け引き(たとえば研究費支援と引き換えに共同研究に持ち込もうとするなど)が展開していました。
しそれを考えれば隔世の感です。
ウイルスの性質・感染力・数理モデル駆使した流行予想と対策等々、これまでなかなか得られなかった情報があっという間に共有されてゆきます。
一方で進歩しないことは、事実ではない流言(うわさ)の拡散や感染者およびその周辺に対する差別といった人類の醜い一面でした。
パニックを含めた心理社会的反応、これに対しては、まだまだ研究が必要な古くて新しいテーマといえるでしょう。
今後、こうした国境を越える感染症に関しては、新しい事象が次々と世の中を変えるパワーを持って出てくるはずです。
ぜひみなさんもアンテナを高くもってみていってください。
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