正しさはコワイ② 支援者が陥りやすい罠
体罰やパワハラ・虐待などの背景には加害者側が信じる「正しさ」があり、それが強い怒りと激しい攻撃を正当化させることは前回お伝えしました。
今回は、相手を正そうとすることに関連した話題を書きたいと思います。
正すという表現が誤解を招きそうではありますが、そのようなやりとりは身近なところで日々行われています。
教師と生徒、上司と部下、親と子における「教育」や「養育」、「支援」はそのひとつでしょう。
想像してみてください。
あなたは今、福祉の仕事をしていますが、利用者さんが約束や指示を守ってくれません。
そのことを注意しても相手に言い返されてしまい、次第に「私の言うとおりにすればイイのに!」とイライラしてきます。
また、相手が子どもであれば「ちゃんと言い聞かせる必要がある」と考えてお説教を始めるかもしれません。
しかし今度は、あなたが支援者という立場ではなく、この場面を想像してください。先程と同じぐらいの怒りを感じますか。
口論になりかけても、どちらが正しいかにこだわらずに「まぁまぁ」とスルー出来るかもしれません。
つまり、ここに記された怒りや攻撃性には「支援をする側/される側」という関係性が影響しているのです。
もう少し言えば、あなたが教師や支援者、先輩や上司であるという状況が、そうさせていると言えます。
我々が、教師や支援者、先輩や上司として相手と関わる際には、知識や経験などある程度の「正しさ」は必要です。
しかしそのことは、相手のことを(上の例では利用者さん)支援が必要で未熟な存在と見なしてしまう危険性もあります。
両者で意見が異なった際に「(自分のほうが正しいのだから)自分の言うとおりにすれば良い」という展開になったのはその一例でしょう。
そこに固執することで相手の出来なさやミスを指摘することに躍起になり、相手を自分に従わせること自体が目的に変わってしまいます。
そのままエスカレートしてしまえば、それはパワハラや体罰という事態になることは周知のとおりです。
このように「支援をする/される」という関係性には「正しさ」との距離が近いぶん、そこへの陥りやすさがデフォルトとして仕組まれています。
意外なことに支援者と呼ばれる人はそのことに無自覚であり続けられる点も含めて「正しさ」のコワいところです。
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