コラム

正しさはコワイ② 支援者が陥りやすい罠

体罰やパワハラ・虐待などの背景には加害者側が信じる「正しさ」があり、それが強い怒りと激しい攻撃を正当化させることは前回お伝えしました。

今回は、相手を正そうとすることに関連した話題を書きたいと思います。

正すという表現が誤解を招きそうではありますが、そのようなやりとりは身近なところで日々行われています。

教師と生徒、上司と部下、親と子における「教育」や「養育」、「支援」はそのひとつでしょう。

想像してみてください。

あなたは今、福祉の仕事をしていますが、利用者さんが約束や指示を守ってくれません。
そのことを注意しても相手に言い返されてしまい、次第に「私の言うとおりにすればイイのに!」とイライラしてきます。
また、相手が子どもであれば「ちゃんと言い聞かせる必要がある」と考えてお説教を始めるかもしれません。
しかし今度は、あなたが支援者という立場ではなく、この場面を想像してください。先程と同じぐらいの怒りを感じますか。
口論になりかけても、どちらが正しいかにこだわらずに「まぁまぁ」とスルー出来るかもしれません。

つまり、ここに記された怒りや攻撃性には「支援をする側/される側」という関係性が影響しているのです。

もう少し言えば、あなたが教師や支援者、先輩や上司であるという状況が、そうさせていると言えます。

我々が、教師や支援者、先輩や上司として相手と関わる際には、知識や経験などある程度の「正しさ」は必要です。
しかしそのことは、相手のことを(上の例では利用者さん)支援が必要で未熟な存在と見なしてしまう危険性もあります。
両者で意見が異なった際に「(自分のほうが正しいのだから)自分の言うとおりにすれば良い」という展開になったのはその一例でしょう。
そこに固執することで相手の出来なさやミスを指摘することに躍起になり、相手を自分に従わせること自体が目的に変わってしまいます。
そのままエスカレートしてしまえば、それはパワハラや体罰という事態になることは周知のとおりです。

このように「支援をする/される」という関係性には「正しさ」との距離が近いぶん、そこへの陥りやすさがデフォルトとして仕組まれています。

意外なことに支援者と呼ばれる人はそのことに無自覚であり続けられる点も含めて「正しさ」のコワいところです。

この記事を書いた人
森 歩夢
森 歩夢 - もり あゆむ -
児童養護施設で十数年間、心理職として勤務していました。その経験を活かして、学生のみなさんには実際の支援現場で役立つ内容を伝えたいと思います。また、僕自身が聴覚障害者であり「みんなとは違う」という体験からカウンセラーや福祉に興味をもちました。今でも「自分だけ」という悩みを抱える人に寄り添える支援者でありたいと思っています。

RELATED POST関連記事

  • 生きること自体に対する不平等 ―人間平等を再考する―
      関西福祉大学の建学の精神の1つに「人間平等」があります。 これは、「人間は、一人ひとり違う。しかし、“大切な存在である”という意味(価値)においては平等である」ことを意味します。 そして [...続きを読む]
  • 私の愛する音楽家~バッハ~
      私が10年間かけて続けてきた活動の一つに、介護保険施設での音楽ボランティア活動があります。 音楽は演奏する側も聴衆側をも幸せにします。 今日は、私が愛してやまない音楽家バッハの生涯をたど [...続きを読む]
  • 適性は形成概念:あなたは向いている? それとも向いていない?
      看護にしても社会福祉にしても、その仕事に向いているか向いていないか、この適性の問題は大事ですよね。 ではどう捉えたらよいのでしょうか。 そもそも適性って、何なのか。 私の大学院修士課程時 [...続きを読む]

LATEST POST最新の記事

  • スポーツは安全第一
      楽しく、刺激的な身体活動であるスポーツは、様々なルールという制約の下、人間の精神力・身体能力の限界を競ったり、身体や道具を巧みに操る能力を競うことで成立しています。 スポーツをする立場、 [...続きを読む]
  • 適性は形成概念:あなたは向いている? それとも向いていない?
      看護にしても社会福祉にしても、その仕事に向いているか向いていないか、この適性の問題は大事ですよね。 ではどう捉えたらよいのでしょうか。 そもそも適性って、何なのか。 私の大学院修士課程時 [...続きを読む]
  • なぜ、勉強するのか?
      私が小学生の頃に「クイズ面白ゼミナール」という番組がありました。 「知るは楽しみなり」という司会者の一言で始まる番組です。 私もこれまでに、何度となく「なぜ、勉強するのだろう?」と考えて [...続きを読む]
PAGE TOP