コラム

経験からの気づき ~すべての人があたりまえに暮らせる社会~

大学院生のとき、重症心身障害者の施設でアルバイトをしていたことがあります。
時間に余裕があったので、障害程度が特に重い人たちの支援に精を出していました。

当時は心の底から「利用者のために」と思って支援をし、また支援することで自分の存在意義を感じるなど、とても充実した日々であったことを思い出します。

そんなある日、仕事を終えて帰る道すがら、軽度の知的障害を持つ利用者さんから「ばいばい」と声をかけられました。
仕事を終えた私は「ばいばい」と返事をすると、「明日は来るの?」と聞いてきます。
「明日は休みだよ」と伝えた次の言葉は今も忘れることができません。

「僕は明日もここにいるんだよ」と言ったのです。

この言葉を聞いたとき、なんと自分は偽善者で、いかに自分本位の支援をしていたのだろうと、本当に頭をガツンと殴られた気がしました。

家に帰れば、私にはあたりまえの暮らしが待っています。

しかし、彼らは施設の中で暮らし、障害者として扱われ続けているのです。

「利用者のために」などと息巻いていたのは、実は「自分のため」であったことを、その一言で突きつけられたのです。

そんなことにも気づけなかった自分に嫌気がさして、福祉の道を諦めようと、当時、お世話になっていた先生のところへ行きました。
一通り話を聞いた先生は、「社会福祉は、不自由な生活を強いられている人たちが、岡崎君と同じように、あたりまえに暮らすことができる社会を実現していくことにある。

ショックを受けて凹むぐらいなら、彼らもあたりまえに暮らせる社会をつくる努力をしなさい。」
とアドバス(というか説教)されました。

二人の言葉に悶々と思いを巡らして、そして「すべての人があたりまえに暮らせる社会」について考えようという覚悟が芽生えました。

この心苦しい経験がなければ、今の私はいません。

その意味で、本当に良い経験をしたと思っています。

これから社会福祉を志す皆さんには、多くの経験が待っています。

その経験に向き合い、人と対話をすることで人生の肥やしとなり、あらたな気づきへと誘うはずです。
傷つくことを恐れずに、今なすべきことに全力で取り組まれることを、期待しています。

この記事を書いた人
岡崎 幸友
岡崎 幸友 - おかざき ゆきとも -
専攻は倫理学で、特に「善の実現に至る道筋」に関心があります。また独我論からの脱出が課題です。

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