虐待を受けた子ども達の心の傷
近年、虐待によって幼い命が奪われるという痛ましいニュースをよく目にするようになりました。
実際、児童相談所の虐待相談対応件数は増加の一途をたどっています。
ここでは児童虐待をめぐる心の傷つきについて取り上げてみたいと思います。
一般的に虐待による心の傷つきとしてイメージされやすいのはPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)ではないかと思います。
阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件以降、この診断名は広く知られるようになりました。
大まかな説明をするとPTSDとは、死にそうになったり、重傷を負ったり、性的暴力を受けるといった出来事を直接経験したり、目撃したり、耳にしたり、繰り返し曝されたりする等によって、次のような症状が現れ、1ヶ月以上持続することを指します。
すなわち、再体験症状(苦痛な記憶が本人の意図に関係なく思い出される)、回避・精神麻痺症状(苦痛な記憶を想起させるものを避けたり、感情自体が感じられなくなる)、過覚醒症状(過度の警戒心や入眠困難等)、認知と気分の陰性変化(陽性の感情が感じられなかったり、自分が悪い・誰も信用できないなどの否定的な信念を持つなど)の症状です。
これらは、人間が危機的な状況に陥った際に、自分を防衛するために生じる正常な反応なのですが、危機が過ぎ去った後も持続し、社会生活に支障を来すようになった場合、治療の対象として問題視されることになります。
実は虐待を受けた子ども達の支援をしようとした場合、このようなPTSDやトラウマを中心とした子ども理解だけでは非常に不十分です。虐待とは非常に複合的な体験であり、様々な視点が求められます。
トラウマという視点で見たとしても、大人とは違うものがあります。
そこで次回のコラムから、虐待を受けた子ども達が抱える様々な課題について、順番に触れていきたいと思います。
RELATED POST関連記事
-
2021/09/13 スポーツ福祉専攻スポーツは安全第一楽しく、刺激的な身体活動であるスポーツは、様々なルールという制約の下、人間の精神力・身体能力の限界を競ったり、身体や道具を巧みに操る能力を競うことで成立しています。 スポーツをする立場、 [...続きを読む]
-
2020/12/29 総合福祉コース福祉はゴール?でもなんでもない!「ローマ人の物語」の作者である塩野七海さんは、著書の中で「福祉によって誇りは満たされない。」と述べています。 この言葉だけだと誤解を招く(福祉は必要ではない等)ので、今少し考えていく必要 [...続きを読む]
-
2021/08/23 総合福祉コースなぜ、勉強するのか?私が小学生の頃に「クイズ面白ゼミナール」という番組がありました。 「知るは楽しみなり」という司会者の一言で始まる番組です。 私もこれまでに、何度となく「なぜ、勉強するのだろう?」と考えて [...続きを読む]
LATEST POST最新の記事
-
2023/11/03 心理福祉コース子どもと家庭を支える想像力と創造力-スクールソーシャルワーク教育課程の取組み-近年、子どもと家庭をとりまく状況は厳しく様々な課題がマスコミ等でも取り上げられています。 少し前であれば、子どもの相対的貧困が大きなトピックとなっていました。 ここ数年で急速に注目される [...続きを読む]
-
2023/10/04 医療福祉コース「社会福祉専門職」としてのソーシャルワーカーソーシャルワークとは、基本的人権の尊重と社会正義に基づき、福祉に関する専門的知識と技術を用いて、生活上の困難や悩みをかかえる人に寄り添い、その人と共にその困難や悩みの解決を図り、一人ひと [...続きを読む]
-
2023/02/26 こども福祉コース変わるのはだれか本学で行っているSDGs(持続可能な開発目標)の取組み。 今となっては生活していればあらゆるところで耳にする言葉なのではないでしょうか。 先進国から開発途上国への一方的な「支援する−支援 [...続きを読む]
コラムTOP
執筆者
タグ一覧
- ALS
- ICT
- PTSD
- SDGs
- あたりまえ
- かけがえのなさ
- つながり
- アスリート
- エンパワメント
- オンライン授業
- コミュニティ
- コラボレーション
- コラム
- コロナ
- コーチ
- コーチング
- コーチ哲学
- ジャージ
- ストレス
- スポーツ
- スポーツウェア
- スマホ
- ソーシャルディスタンス
- ソーシャルワーク
- ダイバーシティ
- デザイン
- トラウマ
- ノーマライゼーション
- ノーマリゼーション
- ハラスメント
- バレーボール
- ホーム
- ボランティア
- メンタルヘルス
- レジリエンス
- 不平等
- 人生
- 人生100年時代
- 人間関係
- 介護
- 体育
- 依存
- 児童虐待
- 共生
- 冷蔵庫マザー
- 協働
- 協力
- 印象
- 危機管理
- 問題行動
- 国家試験
- 声なき声
- 多文化
- 多文化共生
- 多様性
- 多職種連携チーム
- 大学教育
- 子ども
- 子ども支援
- 子ども食堂
- 学会
- 宗教
- 実習
- 尊厳
- 差別
- 平等
- 幸せ
- 復興支援
- 心理療法
- 怒り
- 性格
- 悩み
- 愛情
- 愛着
- 感性
- 感染症
- 成年後見制度
- 授業
- 援助
- 支援
- 政策反映
- 教養
- 文化
- 正しさ
- 正義
- 活動
- 海外研修
- 渡航医学
- 災害ボランティア
- 災害時要配慮者
- 生活困難
- 異文化
- 真実
- 矛盾
- 知性
- 知的障がい
- 研究
- 社会福祉士
- 福祉実践
- 福祉思想
- 福祉教育
- 科学
- 移植
- 精神障がい
- 経済
- 脳死
- 臨床心理学
- 自尊心
- 自己覚知
- 自己責任
- 自立
- 自粛警察
- 自閉症
- 若者
- 虐待
- 表現行動
- 観光
- 認知
- 認知症
- 読書
- 路上生活者
- 連携
- 適性
- 重要な一冊
- 障害当事者の声
- 障害者権利条約
- 難病
- 高齢者
- 高齢者福祉