「講義のオンライン化」は「オンライン講義」か①
新型コロナの影響で日本全国の大学ではオンライン講義が行われています。
本学では6月になり一部対面授業が開始されたものの当面はこのような状況が続くかもしれません。
少なくとも後期も「オンライン講義」が継続されるようです。
今回はこのオンライン講義について前期を振り返りつつ、これからどう取り組むべきなのかを考えてみましょう。
ちょっとシリーズ化を目指してみるのも面白そうです。
このオンライン講義の取り組みは教員の苦悩と言っても良いでしょう。
ただし、私は教育に携わっているものの、教育の専門家ではありません。一実践者としての意見として読んでいただければと思います。
まず、概念の整理です。オンライン講義は、以下の3つに分類されます(文部科学省による定義)。
①同時双方向型
②動画配信(オンデマンド)型
③課題探求型
オンライン講義はこの中の一つを選択して実施することになります。
加えて、このいずれにおいても学生が質問や議論できる機会を設けることが必須となります。
これまでの対面講義では特に意識しなくてもできていたことを意識的に取り組まなければいけなくなった感じですね。
私は主に①と②に取り組みました。今回はまず全体を振り返りつつ、考えをまとめたいと思います。
さて、前期をふり返ると
「そもそもオンライン講義は従来の講義をオンライン化すれば成立するのか?」
という問いがずっと頭を悩ませていました。
そして、なんとなく「従来の講義のオンライン化ではオンライン講義にはならない」という答えにたどり着いているのが現状です。
これまでの講義は大学の教室で受講していましたが、オンライン講義になると自宅での受講となります。
この環境(空間)の変化は大きいと思います。
従来の90分の講義は教員と学生が空間を一緒にするから集中して聞くことができていたのではないかと思っています(もちろん全員が集中しているわけではないかもしれませんが)。
では、90分の講義を単純に撮影し、配信したものを視聴する時、同じように集中できるのでしょうか。
少なくとも私は集中できないでしょう。
ここに大学の教室という空間がもつ意味が存在します。
ということは講義をオンライン化するだけでは十分とは言えないのではないかと思うわけです。
そこで、オンライン講義用に講義設計を再編し、それに即したスライド構成に修正することが求められます。
つまり、90分の講義全体の構成を一から見直さなければいけないというわけです。
これが1科目につき15回分です。
そもそも大学の講義は事前学習(予習)→講義→事後学習(復習)で構成されていて、シラバスにその内容が記載されています。その講義部分は90分という厳密な時間の制約がありました。少なくともこの90分をオンライン講義用にどう構成しているのかを説明できる必要があるでしょう。
つまり、これまでの講義をオンライン用に再構築して実施してきたのが前期でした。
それも急遽決定したオンライン講義…教員も試行錯誤が続いた数ヶ月間だったと思います。
小・中・高校は緊急事態宣言下で休校となり、教育の進捗が大幅に遅れました。
一方、大学ではオンライン講義で対応したことで遅れは最小限に留められたのではないでしょうか。
もちろん前期が終えた段階でふり返ることでオンライン講義の質を考え直し、さらなる向上を目指すことになります。
こういったことを考えるきっかけになったのはFacebookページ「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ(https://www.facebook.com/groups/146940180042907)(秋から「新型コロナのインパクトを受け、大学教員は何をすべきか、何をしたいかについて知恵と情報を共有するグループ」に改称)」のモデレーターとして意識的に全体を見ることができたからだと思います。
多くの大学教員は悩み苦しみ、身体を酷使しながら前期のオンライン講義を乗り越えていたことでしょう。
次回は私の実際の講義を例に挙げていきたいと思います。
RELATED POST関連記事
-
2021/05/20 総合福祉コース生きること自体に対する不平等 ―人間平等を再考する―関西福祉大学の建学の精神の1つに「人間平等」があります。 これは、「人間は、一人ひとり違う。しかし、“大切な存在である”という意味(価値)においては平等である」ことを意味します。 そして [...続きを読む]
-
2022/02/28 総合福祉コース人間一人ひとりに、等しくある「尊厳」 ~「津久井やまゆり園」事件後のソーシャルワーク教育~2016年、神奈川県にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員が施設に侵入し、入所者19人を刺殺した事件が起きました。 犯行の動機は、「重度障がい者は生きている意味がない」、「意 [...続きを読む]
-
2021/09/01 総合福祉コース適性は形成概念:あなたは向いている? それとも向いていない?看護にしても社会福祉にしても、その仕事に向いているか向いていないか、この適性の問題は大事ですよね。 ではどう捉えたらよいのでしょうか。 そもそも適性って、何なのか。 私の大学院修士課程時 [...続きを読む]
LATEST POST最新の記事
-
2023/02/26 こども福祉コース変わるのはだれか本学で行っているSDGs(持続可能な開発目標)の取組み。 今となっては生活していればあらゆるところで耳にする言葉なのではないでしょうか。 先進国から開発途上国への一方的な「支援する−支援 [...続きを読む]
-
2023/02/07 総合福祉コース支援を支える考え方の一つ私たちの行動は、目的を果たすために行われます。 例えば「大学に行きたいから、勉強する」し、「全国大会に行きたいから、練習する」といった具合です。 だから目的を果たせないと分かっていたら、 [...続きを読む]
-
2023/01/21 総合福祉コース政教分離と私立学校高校生から「うちの学校では宗教の時間がある。これは憲法違反ではないのか。」と質問されることがあります。 確かに、日本国憲法第二十条「①信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる [...続きを読む]
コラムTOP
執筆者
タグ一覧
- ALS
- ICT
- PTSD
- SDGs
- あたりまえ
- かけがえのなさ
- つながり
- アスリート
- エンパワメント
- オンライン授業
- コミュニティ
- コラボレーション
- コラム
- コロナ
- コーチ
- コーチング
- コーチ哲学
- ジャージ
- ストレス
- スポーツ
- スポーツウェア
- スマホ
- ソーシャルディスタンス
- ソーシャルワーク
- ダイバーシティ
- デザイン
- トラウマ
- ノーマライゼーション
- ノーマリゼーション
- ハラスメント
- バレーボール
- ホーム
- ボランティア
- メンタルヘルス
- レジリエンス
- 不平等
- 人生
- 人生100年時代
- 人間関係
- 介護
- 体育
- 依存
- 児童虐待
- 共生
- 冷蔵庫マザー
- 協働
- 協力
- 印象
- 危機管理
- 問題行動
- 国家試験
- 声なき声
- 多文化
- 多文化共生
- 多様性
- 多職種連携チーム
- 大学教育
- 子ども
- 子ども支援
- 子ども食堂
- 学会
- 宗教
- 実習
- 尊厳
- 差別
- 平等
- 幸せ
- 復興支援
- 心理療法
- 怒り
- 性格
- 悩み
- 愛情
- 愛着
- 感性
- 感染症
- 成年後見制度
- 授業
- 援助
- 支援
- 政策反映
- 教養
- 文化
- 正しさ
- 正義
- 活動
- 海外研修
- 渡航医学
- 災害ボランティア
- 災害時要配慮者
- 生活困難
- 異文化
- 真実
- 矛盾
- 知性
- 知的障がい
- 研究
- 社会福祉士
- 福祉実践
- 福祉思想
- 福祉教育
- 科学
- 移植
- 精神障がい
- 経済
- 脳死
- 臨床心理学
- 自尊心
- 自己覚知
- 自己責任
- 自立
- 自粛警察
- 自閉症
- 若者
- 虐待
- 表現行動
- 観光
- 認知
- 認知症
- 読書
- 路上生活者
- 連携
- 適性
- 重要な一冊
- 障害当事者の声
- 障害者権利条約
- 難病
- 高齢者
- 高齢者福祉