最近の学生について思うこと
本学の一期生は今40代となり、家庭で、社会で奮闘している。
そうした卒業生と話す機会に、よく「先生、最近の学生はどうですか」と聞かれる。
一期生が学生だったころと比べて、何が変わっただろうか。
あの頃(2000年前後)は、みんな携帯電話を使っていたが、現在はスマートフォンでSNSを使ってやり取りしているとかか。
それ以外では、「就職活動に関して学生間で話さなくなった」ということがある。
特別に親しい友人間は別だが、就活については学生集団の中で話題にしないことが多い。
これは、なぜだろうか。
精神科医の斎藤環氏によれば、年配の世代が「食うため」に働いたのに対し、若い世代にとって就労は「承認欲求の対象」になっているという。
若者の関心は「生存の不安」から「実存の不安」へと移り、職に就くということが「自分が何者か」ということとより深く結びついているという(斎藤 2016:59-66)。
だとすれば、学生の気持ちも察することができる。
就職活動の過程では、うまくいかない(=不採用)という事態はある程度避けられない。
そんな「社会から承認されなかった」(と、学生に感じられるような)事態が生じた時、そのことを周囲に絶対に知られたくはないだろう。
これは昔からあった感覚だが、SNSなどで周囲に自分の動向が瞬時に伝わる今のような環境下では、学生はそのような事態に一層強い不安を感じるのだろう。
だから、多くの学生があえて就職活動の動向をオープンにしたくないと考え、それが暗黙のルールになっているのではないだろうか。
ただ、そんな変化があるとはいえ、今の学生も本質的に変わらない。
彼らも、一期生が学生だったころと同じように葛藤し、友達と交流し、日々成長している。
記憶の中の「私の20代」より、よっぽどしっかりしていて、生き生きとしている。
文献 斎藤環(2016)『承認をめぐる病』ちくま文庫
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