コラム

「新型コロナと福祉思想」その1―ICT社会としんがりの思想―

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため大学でもオンライン授業が中心となり、会議もZoomが使われています。
また、情報の共有や伝達にはMicrosoft Teamsが使われるようになりました。

いま、時代はICT(情報通信技術)により大きく変わろうとしています。

ここでは、ICTに関する知識と技術が必要であり、それらを習得した人たちが新たな時代の一端を切り拓いていくでしょう。
と同時に、そうした知識や技術の習得が困難な人たちは時代に取り残されていく。

そうした時代に突入したことを実感します。

ここで思い出されるのが鷲田清一さんの「しんがりの思想」です。
鷲田さんは社会が成長ではなく縮小せざるを得ない社会を迎えるに際し、「先頭で道を切り開いてゆくひとよりも、むしろ最後尾でみんなの安否を確認しつつ進む登山グループの「しんがり」のような存在の判断が最も重要になってくる」と述べています(鷲田清一『しんがりの思想―反リーダーシップ論』KADOKAWA,2015年,p.140)。

ICTが発達した社会にも、ZoomにしてもMicrosoft Teamsにしても、それらを活用する知識や技術の習得が容易ではない人がいます。
そのため、これからの社会は、ICTが苦手な人たちが「取り残される社会」ではなく、「誰も取り残されない社会」であることが望まれます。

「誰も取り残されない社会」は、SDGs(国連サミットで採択された持続可能な開発目標)の理念ですが、これは「最後の一人の福祉の実現」という福祉思想と同じものです。

それを実現するための視点を示しているのが「しんがりの思想」だと思います。

この記事を書いた人
中村 剛
中村 剛 - なかむら たけし -
福祉現場の経験と哲学という営みを通して、社会福祉の根拠となる「知」を明らかにしたいと思っています。

RELATED POST関連記事

  • 子どもに寄り添う大切さ
      私が「児童相談所」に勤めている時の話です。 5月のある日、中学3年のMさんが母親に連れられて来られました。 来談した理由は、「不登校」です。 中学2年の2学期から登校しぶりが見られ、中学 [...続きを読む]
  • 自己覚知について
      本学社会福祉学部では、日本におけるソーシャルワーカーの国家資格である社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験受験資格が取得可能である。 私は、大学でソーシャルワーカーが用いる相談援助の方法( [...続きを読む]
  • 「大切なこと」をスケッチする⑤ ―難病の人に学ぶ―
      今年、授業の一環として難病患者の人へのソーシャルワークを学んでいます。 難病とは、 ① 発病の機構(原因)が明らかでない ② 治療方法が確立していない ③ 希少な疾患である ④ 長期の療 [...続きを読む]

LATEST POST最新の記事

  • スポーツは安全第一
      楽しく、刺激的な身体活動であるスポーツは、様々なルールという制約の下、人間の精神力・身体能力の限界を競ったり、身体や道具を巧みに操る能力を競うことで成立しています。 スポーツをする立場、 [...続きを読む]
  • 適性は形成概念:あなたは向いている? それとも向いていない?
      看護にしても社会福祉にしても、その仕事に向いているか向いていないか、この適性の問題は大事ですよね。 ではどう捉えたらよいのでしょうか。 そもそも適性って、何なのか。 私の大学院修士課程時 [...続きを読む]
  • なぜ、勉強するのか?
      私が小学生の頃に「クイズ面白ゼミナール」という番組がありました。 「知るは楽しみなり」という司会者の一言で始まる番組です。 私もこれまでに、何度となく「なぜ、勉強するのだろう?」と考えて [...続きを読む]
PAGE TOP