コラム

それでも、自分のゴールにむかう ~ストレスと受け止め方の話~

 
大学で勤務をしていると、卒業生から連絡が入ったり、研究室に顔を見せにきてくれたりすることがあります。

社会人になって、元気に過ごしているという近況報告もあれば、少し働くことが辛くなってきているという相談もあったりします。

社会人として、これまでとはまったく異なる環境に身を置くことは、さまざまなストレスの連続であろうと思います。

社会というところは、必ずしも悪いことばかりではありませんが、かといって常に正しい世界でもありません。
おかしなことが平気でまかり通ることもありますし、利害の対立や駆け引き、時にはいわれのない悪意にさらされることもあります。

こういったことが、人を疲弊させるのは間違いのないことです。

しかし、一方で実際に起こった出来事だけではなく、それを自分がどのように受け止めるかという部分もストレスに大きな影響を与えることが知られています。

例えば、何か大きな仕事を任されることになったとします。
その出来事を「自分には到底無理だ」と受けとめてしまうとストレス以外の何物でもありません。
しかし、「新しいスキルを身につけるチャンスだ」と思えば、ストレスは少し軽減されるかもしれません。このように、起こった出来事もさることながら、それをどう受け止めるかで、ストレスの負荷は変ってくるようです。

実はこのストレスと受け止め方の関係は、よく知られたお話です。

しかし、私は「ポジティブ・シンキングで行こう!」などと言いたいわけではありません。

誰もが受け止め方の転換のようなことをできるわけではないからです。
まして、本当に追い詰められて疲れてしまった人というのは、視点の異なる考えを持つということは困難です。
仮にできても、そのような考え方をできない自分を「情けない」「弱い」と思ってしまい、さらに苦悩を深めてしまうことがあるからです。

ここで最初の卒業生の話にもどるのですが、私は「ポジティブ・シンキングのすすめ」のような話はせず、恩師から教えてもらった話を卒業生にするようにしています。
それは「人生はラグビーみたいなもの」という話です。
体力がある時はスピードにのって、相手や課題に正面からぶつかってもいいけれど、それだけではいつかつぶれてしまう。
時にはパスをする、時にはかわす。
かわしながらも、「それでも自分自身のゴールには向かっている」ということが大切というお話です。

生真面目に仕事に向き合い、生真面目に自分の課題に向き合い、生真面目につぶれる必要はありません。
自分自身のゴールを大切にすればよいのです。

こんな受け止め方の転換、ストレスマネジメントがあってもよいかと思います。

この記事を書いた人
高田 豊司
高田 豊司 - たかた とよし -
心療内科クリニック、スクールカウンセラー、重症心身障害児施設等を経て、児童養護施設の心理職として勤務してきました。授業だけではなく、現場で役立つ実践的な学びが得られる機会を作っていきたいと考えています。また研究室が、在学中のみならず、卒業後の学生の皆さんの心の拠り所となれば考えています。

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